マットピラティスのロールアップは、腹筋の筋力不足や背骨・股関節の柔軟性の低さ、呼吸と動作のタイミングのずれなどが原因でうまくできないことがほとんどです。この記事では、ロールアップができない具体的な原因を明らかにしたうえで、段階的な対策エクササイズや自宅で実践できる練習メニューまでをわかりやすく解説します。
マットピラティスのロールアップとはどんな動き
ロールアップは、マットピラティスの基本的なエクササイズのひとつです。仰向けに寝た状態から、背骨を一節ずつ順番に床から剥がすようにして上体を起こし、最終的に前屈姿勢まで到達する動作です。そして同じように背骨を一節ずつ床に戻しながら、ゆっくりと仰向けの状態に戻ります。腹筋の力だけに頼うのではなく、背骨の分節的な動きと呼吸を連動させながら行うのが特徴です。
ロールアップの基本的な動作手順
まず、マットの上に仰向けになり、両脚をまっすぐ伸ばして揃えます。両腕は頭の上に伸ばし、全身を長く保ちます。息を吸って準備し、息を吐きながら両腕を天井方向に向けて持ち上げ、あごを引いて頭、首、肩、背中の順に背骨を少しずつ床から離していきます。そのまま上体を前に倒し、両手をつま先の方へ伸ばして前屈します。次に息を吸い、吐きながら骨盤から背骨を一節ずつ床に戻すようにしてゆっくりと仰向けに戻ります。この一連の動作を、勢いをつけずにコントロールして行うことが重要です。
ロールアップで鍛えられる筋肉と得られる効果
ロールアップでは、お腹の中にある腹斜筋や腹横筋などの腹部の筋肉が主に働きます。特に、深層に位置するインナーマッスルである腹横筋への刺激が大きく、体幹の安定性を高めるうえで効果的です。また、背骨を一節ずつ動かす動作は、脊柱起立筋や多裂筋など背面の筋肉にも働きかけます。さらに、ハムストリングスや股関節まわりの柔軟性向上にも役立ちます。継続的に取り組むことで、姿勢の改善や腰痛の予防、体幹の強化といった効果が期待できます。
マットピラティスでロールアップが出来ない主な原因
ロールアップは一見シンプルな動きに見えますが、複数の身体的要素が組み合わさって初めて正しく行えるエクササイズです。うまくできない場合には、以下のような原因が単独または複合的に関係していることがほとんどです。自分がどの原因に当てはまるかを確認することが、改善への第一歩となります。
腹筋の筋力が不足している
ロールアップは、上体を床から持ち上げる際に腹筋群の筋力を必要とします。腹直筋だけでなく、腹横筋や特に腹斜筋といったインナーマッスルが連動して働かなければ、スムーズに起き上がることができません。筋力が不足していると、勢いをつけて起き上がろうとしたり、途中で動作が止まってしまったりすることがよくあります。
日頃から腹部のインナーマッスルを意識的に使う習慣が少ない方や、運動不足の方はとくにこの原因が当てはまりやすい傾向があります。
体幹の安定性が低い
腹筋の筋力があったとしても、体幹全体の安定性が低いと、動作中に身体がぐらつき、コントロールされた動きを維持することが難しくなります。ロールアップは上体を一椎骨ずつ順番に動かすコントロールが求められるため、体幹が安定していなければ、背骨を均等に使うことができません。
体幹の安定性は、腹横筋や多裂筋などの深層筋によって支えられています。これらの筋肉が十分に機能していないと、動作の途中で腰が反ったり、肩や首に余計な力が入ったりする代償動作が起こりやすくなります。
股関節や背骨の柔軟性が足りない
ロールアップでは、仰向けの状態から上体をCカーブの形に丸めながら起き上がる動きが必要です。このとき、背骨が一節ずつ柔軟に動ける可動性がないと、特定の部位だけに負担がかかり、なめらかに起き上がることができません。
また、太ももの裏側(ハムストリングス)の柔軟性が低い場合、足が浮いてしまったり、股関節の動きが制限されて上体の動作に影響が出ることがあります。デスクワークが多い方や運動習慣が少ない方は、背骨や股関節まわりの柔軟性が低下しやすいため、注意が必要です。
呼吸と動作のタイミングが合っていない
ピラティスでは呼吸が動作と深く結びついており、ロールアップでも適切なタイミングで息を吸い、吐くことが重要です。一般的に、起き上がる際に息を吐きながら腹部を引き込むことで、腹筋が効果的に働きやすくなります。
呼吸を止めてしまったり、吸うタイミングと吐くタイミングが逆になってしまうと、腹筋の力が十分に発揮されず、動作が途中で止まる原因となります。ピラティス特有の胸式呼吸や肋骨呼吸に慣れていない初心者の方に多く見られる原因です。
骨盤の使い方が正しくできていない
ロールアップでは、骨盤の動きが起き上がりのスムーズさを大きく左右します。骨盤が前傾または後傾したまま固まっていると、背骨を順番に動かすことが難しくなり、腰に過剰な負担がかかることもあります。
正しくは、動作の開始時に骨盤をわずかに後傾させ、腹部を引き込みながら背骨を下から順に持ち上げていくイメージが必要です。骨盤の感覚がつかめていない場合は、ロールアップ以前の基本的なニュートラルポジションの習得から見直すことが重要です。

ロールアップが出来ない方のための段階的な対策
ロールアップができない原因はひとつではないため、対策も複数の角度から段階的に取り組むことが大切です。焦らず順を追って練習することで、動作の精度と安定性が高まっていきます。
まずはハーフロールダウンで感覚をつかむ
ロールアップの完全な動作が難しい場合は、まず「ハーフロールダウン」から始めましょう。ハーフロールダウンとは、座った状態から上体をゆっくりと半分の位置まで後ろへ倒し、また戻してくる動きです。
この練習により、骨盤を後傾させながら背骨を一節ずつ動かす感覚、いわゆる「アーティキュレーション」を体に覚えさせることができます。ロールアップの動作はこの感覚がベースになるため、ハーフロールダウンを繰り返すことは非常に効果的な準備運動となります。
ハーフロールダウンの手順
膝を立てて座り、両手を太ももの裏に添えます。息を吸って準備し、吐きながら骨盤を後傾させ、背骨を丸めながら上体を半分ほど後ろへ傾けます。その後、吸いながら元の座位へ戻ります。5〜8回を目安に繰り返しましょう。慣れてきたら手のサポートを外し、腕を前に伸ばした状態で行うとさらに効果的です。
腹筋の深層筋を鍛えるエクササイズ
ロールアップには表層の腹直筋だけでなく、腹横筋や腹斜筋といった深層の筋肉を使うことが重要です。これらの筋肉を効果的に鍛えるエクササイズを取り入れましょう。
ハンドレッド(ハンドレッズ)
仰向けに寝て両脚を45度に上げ、頭と肩を床から浮かせます。両腕を体の横でポンピングするように小刻みに上下させながら、鼻から5カウントで吸い、口から5カウントで吐く呼吸を繰り返します。合計100回のポンピングを目標にします。腹部を常にへこませた状態を保つことが大切です。
ニーフォールアウト
仰向けになり膝を立て、骨盤をニュートラルに保ちます。息を吐きながら片方の膝をゆっくりと外側に倒し、吸いながら元に戻します。骨盤が動かないよう腹横筋で固定することを意識しながら、左右交互に10回ずつ行います。
背骨の柔軟性を高めるストレッチ
背骨が硬いと、ロールアップで必要な「丸める」動作がスムーズにできません。日頃から背骨全体の柔軟性を高めるストレッチを習慣にしましょう。
キャット&カウ
四つばいの姿勢から、息を吐きながら背中を丸めて天井へ向けて持ち上げ(キャット)、吸いながら背中を反らせてお腹を床へ向けて落とします(カウ)。これを10回繰り返すことで、背骨の屈曲・伸展の可動域を広げることができます。
スパインストレッチフォワード
脚を肩幅より少し広めに開いて座り、両腕を前に伸ばします。息を吐きながら背骨を丸めるように体を前へ倒し、吸いながら背筋を伸ばして戻ります。背骨を一節ずつ動かすイメージで行うと、柔軟性向上に効果的です。
股関節まわりをほぐすアプローチ
股関節まわりの柔軟性が低いと、ロールアップの際に脚が浮いたり骨盤が不安定になったりします。ハムストリングスや股関節屈筋群のストレッチを取り入れましょう。
ハムストリングスのストレッチ
仰向けになり、片脚を両手で持ってゆっくり天井に向けて引き上げます。膝をできるだけ伸ばした状態で20〜30秒キープし、左右を交互に行います。太もも裏の伸びを感じながら、反動をつけずにゆっくり行うことが大切です。
股関節屈筋のほぐし
片脚を前に出して膝立ちになり、前脚に体重をかけながら腰を前へ沈めます。後ろ脚の付け根あたりに伸びを感じたら、その状態を20〜30秒保ちます。左右それぞれ行うことで、股関節屈筋群の緊張をほぐすことができます。
ピラティス呼吸法を正しく身につける練習
ロールアップでは、呼吸と動作のタイミングを合わせることが動作の質に直結します。まずはピラティス特有の胸式呼吸を単独で練習し、体に定着させましょう。
胸式呼吸の基本練習
椅子や床に楽な姿勢で座り、両手を肋骨の横に当てます。鼻から息を吸い、肋骨が横や後ろに広がるのを手で感じます。口からゆっくり息を吐き、肋骨が閉じながら腹部がへこむのを確認します。この呼吸をロールアップの動作に当てはめると、吸って準備し、吐きながら上体を起こす動きが基本となります。
呼吸と動作を組み合わせる練習
ハーフロールダウンや腹筋エクササイズを行う際に、意識的に呼吸のタイミングを合わせる練習を加えましょう。動作に集中するあまり呼吸を止めてしまうことが多いため、声に出して「吸って・吐いて」と確認しながら行うと意識しやすくなります。

ロールアップを成功させるためのコツと注意点
ロールアップは、正しいフォームと意識を持って行うことで格段にやりやすくなります。ここでは、動作の質を高めるために押さえておきたいポイントと、避けるべきNG動作を解説します。
正しいニュートラルポジションの作り方
ロールアップを始める前に、骨盤と背骨のニュートラルポジションを正確に作ることが重要です。ニュートラルポジションとは、骨盤が前にも後ろにも傾かず、腰椎の自然なカーブが保たれた状態を指します。
仰向けに寝た状態で、腰と床の間にわずかな隙間があるかを確認してください。腰が極端に反っていたり、逆に床に押しつけすぎていたりする場合は、ニュートラルではありません。骨盤の左右の高さが均等になっていることも確認しましょう。
この開始姿勢が崩れていると、動作全体に悪影響を与えるため、毎回丁寧に確認する習慣をつけることが大切です。
動作中に意識したいアライメントのポイント
ロールアップの動作中は、いくつかのアライメントのポイントを意識することで、より安全かつ効果的に行えます。
頭と首の位置
上体を起こす際、顎を引きすぎたり、逆に首を反らせたりしないように注意してください。頭は体幹の延長線上に置き、視線はやや斜め前、もしくは膝方向に向けるのが基本です。首への余分な負担を防ぐために、首ではなく腹部の力で上体を引き上げる意識を持ちましょう。
肩と腕の使い方
腕を前方に伸ばす際、肩が耳に近づかないよう肩甲骨を安定させた状態を保ちます。腕の力で体を引っ張り上げる動作は避け、あくまでも腹部の筋肉主導で動くことを意識してください。
脚の安定性
動作中は両脚がマットから浮いたり、膝が曲がったりしないよう意識します。脚をしっかり固定することで、腹筋が効率よく働きます。どうしても脚が浮く場合は、タオルや軽い重りを足首の上に置く方法も有効です。
やってはいけないNG動作
ロールアップでよく見られるNG動作を理解しておくことで、ケガの予防と効果の最大化につながります。
勢いをつけて起き上がる
反動を使って一気に上体を起こす動作は、腹筋の適切な活性化を妨げるだけでなく、腰椎や首に大きな負担をかけます。常にゆっくりとコントロールしながら動くことがピラティスの基本原則です。
腰を過度に丸める、または反らせる
動作の途中で腰を急激に丸めたり、反対に腰が反りすぎたりすることも避けてください。背骨を一節ずつ順番に動かす「アーティキュレーション」の意識を持つことで、腰への負担を分散させることができます。
息を止めて動作する
呼吸を止めたまま行うと、腹腔内圧が不安定になり、体幹のサポートが得られにくくなります。息を吐きながら腹部を引き込みつつ上体を起こすという呼吸と動作の連動を必ず守りましょう。
自宅でできるロールアップ対策の練習メニュー
ロールアップは一朝一夕に習得できる動きではありません。自宅での継続的な練習が上達への近道です。ここでは、無理なく取り組める具体的なプログラムと活用できる動画コンテンツを紹介します。
初心者向けの週3回プログラム例
週に3回、1回あたり約15〜20分を目安に取り組むプログラムです。毎回同じメニューを繰り返すことで、体が動作を記憶しやすくなります。以下の順番で行うと、準備から仕上げまでバランスよく練習できます。
ウォームアップ(約5分)
仰向けに寝た状態でニュートラルスパインを確認し、腹式呼吸と胸式呼吸を交互に3回ずつ行います。続けてニーフォールドを左右各5回行い、骨盤と腰椎の安定感を意識します。
メインエクササイズ(約10分)
まず、ハーフロールダウンを5〜8回行います。座った状態から骨盤を後傾させながら、背骨を一節ずつ後ろへ下ろす感覚をつかむことが目的です。次に、シングルレッグストレッチを左右交互に10回行い、腹部深層筋であるトランスバーサス・アブドミニスへの意識を高めます。その後、スパインストレッチフォワードを5回行い、背骨の柔軟性と股関節の可動域を同時に高めます。仕上げとして、ロールアップを2〜3回挑戦します。できない場合はタオルやストレッチバンドを足裏にかけて補助し、動作の流れを体に覚えさせます。
クールダウン(約5分)
チャイルドポーズで背骨を伸ばしながら30秒キープし、続けて仰向けで両膝を抱えるハグニーズを行いながら呼吸を整えます。最後に腹部の力を抜いてリラックスし、練習を終えます。
おすすめのYouTube動画
自宅練習において、動作の正しいイメージをつかむために動画を活用することは非常に効果的です。
こちら杉直樹、わたし自身が解説動画をアップしていますので、ご参考にしていただければ幸いです。
まとめ
マットピラティスのロールアップが出来ない主な原因は、腹筋の筋力不足、体幹の安定性の低さ、背骨や股関節の柔軟性不足、呼吸と動作のズレ、骨盤の使い方の誤りです。まずはハーフロールダウンから始め、深層筋強化や柔軟性向上のエクササイズを段階的に取り入れることが上達への近道です。焦らず正しいフォームを意識しながら継続することで、ロールアップの習得につながります。